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分析とは何か? ~統計を学ぶ前に知っておかないといけない分析の話~


前回(←前回の記事のリンク)はWebマーケティングの分析において、数字を正しく扱うことの重要性について書きました。

今回は、そもそも『分析』とは何をすることなのか?という点について話します。統計学を学んだり、今後Webマーケティングの分析を行うにあたってのヒントになれば幸いです。

データサイエンティストが持ってきたすごい分析データや数式がたくさん並んでいる報告書を見て、これはすごい!と思った経験はありませんか?

統計が問題解決においてあたかも万能なツールなのでは??という風に感じた方もいるかもしれません。統計を学んで、マーケティングや営業に活用したい!と思っておられる方は多いと思います。

そんな皆様に最初に申し上げておきたいことがあります。それは、「統計学はあくまでツールの1つに過ぎない」という点です。

たとえ統計の正しい知識を身につけたとしても、意味のないデータ同志を比較しても、意味の無い結果しかアウトプットされません。問題を定義する、分析する、そしてデータを正しく読む、というこの3つの基本的なスキルを身につけたうえで統計を学ぶなら、統計というツールが強力な武器となります。

そこで、統計について詳しく見て行く前に、『分析する』ということに主眼を置いて話を進めていきたいと思います。

この記事でわかること

  • ・分析とはどういうことを指すのか?
  • ・分析しても、真の問題解決にたどり着かないことがあるがそれはなぜか?
  • ・分析するにあたってなぜ統計を学ばなければならないのか?

分析とは何か?

ビジネスの現場では、日々『分析』をが行われています。「正しい認識・判断」により、「正しい対応」をするためです。

世の事象・現象はいろいろな要素が輻輳し、生成の過程や因果関係が複雑に入り組んでいる場合が多いため、『表面の事象だけを見ていたのでは判断を誤り、誤った対応・行動を招く危険性』があります。

なので、何が起こっているのかを限りなく正確に知る必要があるのです。

人は事象を外から見て、中に何があるのか、どうしてそうなったかがわからないとき、とかく「勘による判断」「情緒的な対応」をしがちです。

そんな時、『物事の実態・本質を正しく理解するための作業』つまり分析を通して「勘による判断」から「データに基づく判断」を行うことができるようになります。

例えば前月と比べて売上が下がっているが、これは緊急に対処すべき重大な問題であるのか、あるいは少し様子を見たほうがいいのか、売上を上げるために何をすべきなのか?

といったビジネス上の課題に対して正しいアクションを取るためには分析のスキルが必要となります。

事象を可視化する

下図はあるA社の月次の売上を集計した図です。

1月から3月にかけて売上は順調に右肩上がりでしたが、4月は売上が下がっています。これを上司に見せると「これは問題だ!売上を上げるために対策せよ」となることでしょう。

しかし、ちょっと待ってください。『売上が下がっている』という事象は本当に重要な問題なのでしょうか?

先ほどの売上のチャートに『前年対比』の折れ線グラフを追加してみました。

すると、4月の落ち込みは前年も同様の落ち込みであり、かつ、前年と比べると売上は7%増加していることがわかります。

ここから考えると、売上の現象は季節的なトレンドかもしれないということがわかります。こういった季節性のあるもの、周期性のあるものは『時系列分析』という手法を用いることで詳しく知ることができますが、複雑な統計のスキルを使わなくても、こういったデータの可視化だけでも事象を理解できるようになりますね。

今回は売上のバーチャートに昨年対比という折れ線グラフを追加しましたが、分析の基本は『比較』です。

何と何を比較するのか?

これを事前に決めておくことで分析の8割は完了したといってもいいでしょう。どのように比較対象を選定していくか、テクニックについては次回書くことにします。

ところで、先ほどの売上の事例では季節性があるトレンド、ということで比較的誰でもが想像がつく手法で開設したわけですが、時系列分析は何も季節や時間だけを時系列で追いかけるわけでは無いことを補足しておきます。時系列分析に関する詳細はまた別の記事で解説していこうと思います。

分析における本質的な問題の追求

さて、記事の最初のほうで、分析を行うと「勘による判断」から「データに基づく判断」を行うことができるようになるということを説明しましたが、分析を行うにあたって重要なことがあります。それは分析がアクションに結び付く本質的な部分に落とし込まれているかという点です。

先ほどの売り上げデータは自社における前年度との対比を行いましたが、ここにもう1つ、「市場の成長率」というグラフを足してみました。

すると、市場は前年対比で150%も成長しているにも関わらず、自社は前年と横ばいの107%成長であったことがわかります。

先ほどの分析の結論では、トレンドだから4月の売上が下がったことは大きな問題ではないのではないか?と結論付けましたが、このグラフを見ると成長市場において他社のシェアが上がっていることを意味しているので、これは問題である!という結論になります。

そうすると先ほど分析から導き出したアクション(季節トレンドだから様子見する)を実行することは、会社にとって最適でなかった可能性が出てきました。

この事例のように正しい分析が行われないと、そのあとにとるアクションが全く無駄になってしまう可能性もあります。

表層的な問題から本質的な問題にたどりつくことの重要性は様々な本やブログでも語られていますので、この統計講座で詳しく述べることはしませんが、今後も優秀な分析として活躍することを考えるのであれば、これから分析するものは本質的な問題を導くためのものであるかどうかは、注意深く観察する必要があります。

本質的な問題を追及した結果、全く違う部門が管轄する問題であったという例を1つ挙げておきます。

以下の例は、ある会社の製品別の売上を分析していて、主力商品Aのシェアが下がっているという事象に対してその反応と問題を細分化していったプロセスを示しています。


【出典】齋藤 嘉則(2010)『新版 問題解決プロフェッショナル―思考と技術』P.81図2-17 ダイヤモンド社

表面的な事象から導き出される答えはどれも「営業力を上げる」という結果でした。起こっている事象は『営業マンの問題』であると処理されていたわけです。

しかし、問題を分解し、分析を進めていった結果、『新規顧客の営業評価がリピート顧客の営業評価と同じで苦労しても割が合わない』という『人事制度の問題』であったことがわかります。

もちろん市況の変化、競合の頑張りなど、複数の要因は考えられるためすべてが「人事評価制度」の問題であるとも断定は難しいですが、ただ、重要なことは、「いろんな問題や原因は考えられるものの、問題として『優先度が高そう』な問題」に着手するためにには、こういった問題の本質にたどり着くための分析の技術が必要だということになります。

こういった問題の本質を追及できていないとか、集計したデータを読み違えるという現象は、ブログで取り上げるだけの単なる事例というわけではなく、分析の現場では多々起こり得ている、というよりも、しょっちゅう起こっている問題なのです。

Webマーケティングの事例においても同じようなことがあるという点は前回バナー 広告のABテストの事例を用いて説明しました。

インターネット広告の掲載を請け負っている代理店の担当者が、現在出稿しているバナー広告のテスト結果を知りたいという要望をクライアントから連絡を受けたという状況を想定し以下のバナーのどちらを採用すべきか?という点について論じました。

分析したと錯覚してしまう事の危険

私が今いるWebマーケティングの世界(それ以外の世界でもそうですが)では、よく『PDCAサイクル』を回しましょう!といわれていています。

Webマーケティングの良い点は、行ったすべてのアクションに対して、数字で判断できるところです。

しかし、数字を基にしてABテストやPDCAサイクルを回そうとしても、ある程度の仮説が無いと無意味なテストを繰り返すのみとなってしまいます。

従来型の運用者の場合は仮説に基づかずに広告テストを繰り返すことが多いため、PDCAサイクルの結果が正しくパフォーマンスに反映されません。

マーケティングのコンサルティングの仕事をしている関係で、多くの広告代理店や事業会社のマーケティング担当者と打ち合わせをする機会がありますが、大変残念ながら多くの広告代理店や事業会社のマーケティング担当者の中でこういったことがみられるのが実状です。

次回以降の記事でも取り上げるのですが、こういった、集計だけで解決できない結論を導くために、統計の知識が大いに役に立つわけです!(ようやくここで統計の話が出てきました!)

人は事象を外から見て、中に何があるのか、どうしてそうなったかがわからないとき、とかく「勘による判断」「情緒的な対応」をしがちだ、という話を冒頭にしましたが、まさにこういったデータを見て「なんとなくバナーAのほうがよさそう」というような判断をしないために統計を使いましょう!とう話なのです。

繰り返しになりますが、分析を通して「勘による判断」から「データに基づく判断」を行うことができるようになりましょう!というのが今回の結論です。

この記事のまとめ

  • ・分析とは『物事の実態・本質を正しく理解するための作業』のこと
  • ・表層上の分析は正しい判断に至らない可能性がある。
  • ・取り組んでいる分析内容が本質的な答えにつながる優先度の高いものであるかを常に意識する。
  • ・統計を学ぶことで、分析において「勘による判断」から「データに基づく判断」を行うことができるようになる。

それでは今日はここまで。

次回は『具体的な分析に使える考え方と仮説の作り方』について詳しく述べていきたいと思います。


記事を書いた人

フクダ研究員

大手インターネット企業でコンサルティング事業部の立ち上げやWebマーケティングにおける実践手法の体系化に取り組んだのち、ビッグデータ解析の企画や分析に携わっていました。

現在は各社のWebマーケティングの顧問をしながら、Webマーケターの分析力向上にむけた教育を行っています。

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